令和2年度 厚生労働科学研究費補助金
:補装具費支給制度等における適切なフォローアップ等のための研究(20GC102)

研究背景

障害のある方にとっての補装具は日々の生活を送るうえで欠かせない用具である。しかし、不適切な補装具や破損した補装具を使用し続けている方、どこに相談をしたらよいのかわからないといった方等がいる状況が生じている。各利用者にとって必要な補装具を適切に評価して支給すること、さらにはこうした補装具が適切に、かつ継続的に使用されることは、利用者の利便性向上に直結するとともに、公費の効率的な運用にもつながる。

研究目的

健康保険制度を用いて装具処方を行う病院、障害者総合支援法による支給を行う身体障害者更生相談所、実際に補装具を提供する製作事業者などにおける治療用装具や補装具の支給とフォローアップの現状を調査し、課題を明らかにする。多機関、多職種が役割分担しながら、補装具の適切な支給とフォローアップを実施できるモデルを作成し、効果検証を行うことを目的とする。

令和2年度 結果概要

身体障害者更生相談所の調査では、補装具のフォローアップを現在、あるいは以前に実施している更生相談所は全国で18カ所(25%)に過ぎなかったが、そのほとんどが効果や今後の必要性を認識していることが判明した。
また、千葉県内の回復期リハビリテーション病棟を対象としたアンケート調査では、当初の予測より高率で外来フォロー、退院後の装具修理、再作製が行われていたことが判明した。
補装具製作事業者を対象にしたアンケート調査では、義肢装具等のフォローアップ体制が製作事業者により異なり、4分の1の製作事業者ではフォローアップが行われていないこと、積極的に義肢装具等の状態を利用者に問いかけている製作事業者が少ないこと、利用者から不具合の連絡があった場合の対応も一定でないこと、が明らかになった。
筋電義手利用者に対するアンケート調査の解析では、当事者同士の情報共有の場の設置が重要であることが明らかとなった。そのための試行として「義手オンラインミーティング」を2回開催した。
本調査において補装具のフォローアップに関しては、身体障害者更生相談所、地域の医療機関、補装具製作事業者、市町村、リハ専門職等の地域の社会資源との連携、システム作りが今後の課題であることがわかった。